変な話ですが、今回の肺炎を切っ掛けに面白い事に遭遇しました;
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この記事の履歴
- 「Byetta 10μg」は、肺炎になると同時に、血糖値を下げる事ができなくなるらしい。
- これは、肺炎というよりは「感染症が進むと、白血球を中心とした免疫系」が発動して、白血球の増産、抗体活性を増進を計る為の体温上昇などが展開するらしいが、
- Byettaのように南米の大トカゲ由来のインクレチンの至適温度範囲が狭く、上記の体温上昇によって、Byettaは作動しなくなるのでは無かろうか?
- 他方、ノボラピッド Rapid300」はヒト由来のインシュリンの為に、
- 上記の体温上昇範囲ならば、その機能が至適範囲に入っているのではなかろうか?
- 久しぶりに、細かく血糖値を測定しながらRapidの注入単位を調節した。そのお陰で、昔の雰囲気をだいぶ思い出した。
- また、肺炎が治るまでの三週間ほどは、体力が低下してパソコンの前に座る事もできなくなった;
- どうやら腰に力が入らないので、背骨を垂直に保持できなくて前傾し、そのために首が前に傾いでしまう。
- そこで ベットで読書するしかなくなる。
- そこで、折角だから糖尿病の本を見直すことにした;
- 「からだの働きからみる 代謝の栄養学」、田川 邦夫・著、タカラバイオ、ISBN078-4-024862-17-3
- これまでは糖質の部分しかみていなかったが「脂質の生理機能」、「脂質の消化吸収と代謝」に目を通した;
- p77: 肝臓ではアセチルCoAはケトン体に転化し、抹消の燃料と成る。腎臓と心臓はかなり強力なβ酸化活性をもっているので、通常必要なエネルギーの大部分は脂肪酸の酸化でまかなわれる。
- p78: 図6-6 腎臓や心臓と肝臓における脂肪酸化の相違
- p79: 肝臓のケトン体生産能力は非常に大きい。低血糖時には、脂肪細胞のホルモン感受性リパーゼが活性し、大量のNEFA(アルブミン結合脂肪酸)が血中に放出される。一部は心臓、腎臓および運動中の筋肉に入るが、残りはすべて肝細胞に取り込まれる。 肝細胞では盛んにβ酸化が進行し、ケトン体が生産する。
- p79: 図6-7 糖原生とケト原生 ー 肝臓における生体燃料の供給
- p80: 低血糖時の肝細胞ではアセチルCoAはTCAサイクルで酸化されない。
- p80: ケトン体の血中濃度が高くなるとケトアシドーシスになる。肝臓で合成されるケトン体は、水溶性の生理的に最も燃えやすい燃料であり、体内輸送に特別な装置を必要としない。しかも、その主原料であるNEFAのような細胞毒性はない。しかし、大量に生成し、筋肉で燃焼できないときには問題(pHが酸性に傾く)が生じる。
- p80: ケトアシドーシスではアセトンが発生する。ケトアシドーシスでは血中のケトン体濃度が1mM以上になる。アセト酢酸は不安定な化合物で、時間が経つと自然に脱炭酸をしてアセトンになる。アセトンは生理的な燃料にはならず、揮発性のために肺から排出さ
- れる。
- p81: 重症糖尿病患者の血中および呼気にアセトンが存在することがケトン体という名称の由来である。このように、ケトン体は最初、病態原因物質として認知されてきたために、医学・医療の分野では悪者扱いされて来た。しかし、健常人では生理的燃料であることに留意しなければならない。
- p81: 飢餓状態が長時間続いても、ケトアシドーシスに陥る。ケトン体を主に消費するのは筋肉であるので、飢餓状態では常時安静にしているよりも、軽い運動をして筋肉でケトン体を燃
- 焼する方が危機を脱出できる。
- p82: 図6-8 CoAはNEFAの代謝に大きな役割を果たしている。肝細胞に大量のNEFA(アルブミン結合脂肪酸)が流入すると、β酸化で生成するアセチルCoAが加水分解されてCoAが再生し、NEFAがアシルCoAに転化してβ酸化が最大速度で進行する。その際、ケトン体のほかに遊離の酢酸が生成し、血中に放出される。
- 以下略。
- ということで、ケトン体、ケト原生、糖原生などについて、最近の分子生物学の本を見たくなって来た。
- 「わかる!身につく! 生物・生化学・分子生物学」、田村 隆明・著、南山堂、ISBN978-4-525-13141-8
- この本は、用語の初歩的な定義を明確にしてくれる。例えば、p90の「D 補酵素」に「補酵素A(コエンザイムA:CoA)」という説明がある。生化学に暗い素人には有難い。
- でも他方で、反応式は意外と途中が端折られている。そんな感じの場合には、前後の単語からインターネット検索をかけると善いようだ。
- で、まだこの本はよく見ていないが、ケトン体の項, p139に興味深い記述があった;
- p139 図11-12 アセチルCoAからのケトン体生成、およびその代謝
- p139 3. ケトン体の生成 肝臓では、脂肪酸代謝が活発化すると、クエン酸回路(TCAサイクル)の能力を超えてアセチルCoAができ、アセチルCoAからアセトアセチルCoAを経て、アセト酢酸が蓄積しやすい(図11-12)。アセト酢酸は二酸化炭素を放出してアセトン、還元されてD-3-ヒドロキシ酪酸になるが(アセト酢酸、アセトン、D-3-ヒドロキシ酪酸はケト基を持つので、ケトン体といわれる)、肝臓ではアセト酢酸を代謝してアセチルCoAに戻す酵素がないために、ケトン体は肝細胞を出てほかの臓器に運ばれ、そこでアセチルCoAに変換され、クエン酸回路で代謝される。筋肉や脳(脳にはβ酸化系がない)では、ケトン体は重要なエネルギー源になる。
- これに対して、先にご紹介した『「からだの働きからみる 代謝の栄養学」、田川 邦夫・著』では、
- p2: ヒトの体を構成する細胞の多くは、グルコースと脂肪の両方を燃料とすることができるが、脳は特別で、グルコースしか燃やすことができない。
- p2 図1-1 脳は脂肪を燃焼できない。
- この記述は多くの栄養関係者の信じていることだと思う。特に、多くの糖尿病専門家と言われる人々が、バーンスタイン医師の方法を批判する場合の、根拠となっていると思われる。
- 田川さんが新たな本で、詳しく解説し、修正される事を期待する。
- p160: 3. アミノ基が外れた炭素骨格の代謝:糖・脂質代謝経路での基質供給
- a. 糖原生とケト原生 図13-5 アミノ酸炭素骨格の代謝
- b. エネルギー物質としての利用
- ここに至って、『「Dr. Bernstein's Diabetes Solution 2007ed.」, Richard K. Bernstein, MD, Little, Brown and Company, ISBN 978-0-316-16716-1』を丁寧に見返す段階にきた。
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- 開始 2012-08-04 (土) 01:10
- 追加 2012-08-04 (土) 10:41 からだの働きからみる 代謝の栄養学、p2 : 脳での燃料。
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